

| 昨年夏、あるクラブのイベントで一人のM女に出会った。 そのイベントはパントマイムや舞踊を前面に押し出した前衛的な催し物が主体だ った。イベントも半ばを迎え、若干の休憩後トランステクノをBGMにした緊縛パ フォーマンスが始まった。天使の羽をつけた小柄な女の子がワンピースの女の子 を椅子に縛りつけていく。縄師の本格的な緊縛を見慣れたものにはそれは陳腐な ショーにすぎなかった。が、そのいかにも表面的な縄の戯れ事が、ある一瞬だけ 異様な空気を醸し出したのだった。 その緊縛パフォーマンスは雑多な観客席の中で行われていた。つまりパフォー マーの周りは観客で一杯だったわけだが、ワンピースの女の子を縛り上げてしま ったパフォーマーは、椅子の近くにいた観客の女の子に余った縄を延ばしたのだ った。 |
| マンションのリビングに青いビニールシートが敷かれ、そこに全裸の女が四つん這 いになりお尻を高く突き出して喘いでいる。全身に筋彫りを施したレザーファッショ ンの女王様が四つん這いの女のアヌスに手術用のゴム手袋を装着した指を出し入れし ているのだ。1本、2本と挿入する指が徐々に増えていく。 「エリカのお尻は本当にHだね。何本でも指が入っちゃうよ。」 指を4本根元までアナルの奥に食い込ませながら女王様がM女を言葉でいたぶる。お 尻の快感にもだえ、息も絶え絶えなM女はその言葉に応えることもなく腰を震わせて いた。4本の指をアナルに挿入しながら女王はもう一方の手で性器をもてあそぶ。声 にならない嬌声を上げるM女の反応をみて彼女の表情には楽しそうな微笑が現れた。 |
| 8月末、四谷三丁目にある地下アトリエで耽美会の催しが行われた。耽美会は縄師 千葉曳三主宰のSMサークルである。耽美会は月に数回M女をマニアの目の前に晒し 縛りを披露するパーティを催している。今回の催しは千葉が縄縛りを教示している美 曳、美雄、荊子が中心となって企画したものだった。彼女達3人はいずれもまだ20 代半ばの女性であり、一見すると縄縛りをするとはとても思えないようなあどけない 風貌をしている。彼女たちは人間の性(サガ)を追求するSMという枠での縛りは望 んではいないようだった。彼女たちの縄の対象は、M性のある男女のからだではなく 、むしろ人格を持たない無機物であることが多い。電柱、ピアノ、ぬいぐるみ、豆腐 、たまごっち等、およそ形あるものはすべて彼女たちの縄のターゲットとなりえた。 人体を縛ったとしても彼女たちの対象への接し方はオブジェとしてのそれである。表 面的には縄が日常の風景とかみ合ったところで生まれるロートレアモン的な不条理ア ートの創造もしくはそのパフォーマンスによって生じる状況の非日常化が彼女たちの 主要な関心事のように思われた。「緊縛一夜」と題されたその夜の催しはそんな千葉 道場の弟子達の縄縛り発表会というニュアンスが強いものであった。今回千葉はゲス トとして招かれており、昨年来の千葉の重要なパートナーである彩花との緊縛ライブ を行う予定であった。 |
| 「この物語は北の山深い森の出来事であったそうな・・・。今日も餌を求めて二匹のキツネが端から飛び出してきたそうな。・・・。一匹は雄ギツネであり、もう一匹は雌ギツネだったそうな・・・。雄ギツネは日夜雌ギツネを痛めていたそうな。ところが雄ギツネの責めを嫌がっていた雌ギツネもやがていつしかその責めを待ってる風情になってしまったそうな・・・。」
そんなナレーションが流される中、瀟洒な白無垢の長襦袢を着た女が舞台袖から現れた。女は狐の面をつけている。音楽に合わせて舞を踊りながら観客に挨拶をするように舞台中央に進む。面をとるとそこには既に恍惚とした表情があった。続いて狐の面をかぶった男が現れる。男は女の手を引くとおもむろに縄で縛り上げた。手首足首を縛られた女はあっという間に宙吊りにされる。男は縛り上げた先の縄尻をもち女を振り回した。長襦袢は自然にめくれ白いお尻や形のいい胸が白いスポットライトで照らし出される。いったん吊りをやめた男は女の長襦袢をはぎとり全裸にした。そしてうつ伏せ状態で再度宙吊りにし、鈴のついた特大の蝋燭で女の背に蝋責めを行う。ときおり苦痛の表情が浮かんでも女の顔には終始恍惚感が漂っていた。 |
| 6月の下旬の日曜日、埼玉県西北部に位置する秩父で明智伝鬼の緊縛イベントが催された。西武鉄道・西武秩父線・池袋駅9:30分発の特急レッドアロー号に乗り秩父へと向かう。昨晩この時期には珍しく台風が関東一円を直撃した。台風が梅雨前線を一掃してしまったのだろう梅雨時ではあったがこの日は快晴となり電車の窓からはあざやかな青空が広がってるのが見えた。途中、山間部の緑は夏の強い日の光を反射してみずみずしいまでにまぶしかった。 kikkouが明智伝鬼のイベントを取り上げたのは昨年の12月のことであった。その後も明智は渋谷・シアターDの芝居「ジェームスボンデージは2度死ぬ」への出演、写真集プロデューサー高須基仁と組んでのボンデージビデオ作品発表、そして長年の夢だった本格的SMサロンの開設と精力的な活動を展開している。この秩父の温泉場での緊縛イベントは、今年で早くも10年目を迎えるという。 秩父鉄道に乗り換え3駅目の黒谷で下車する。イベント場の温泉宿「S」は黒谷駅から歩いて5分の場所にあった。横瀬川と荒川の合流点の崖上に建てられた宿は景勝であり、その美しい景観と淫靡なまでの催しが絡み合うことがその場では想像できなかった。 |
| 女王様、天之蘭の主催する「JAM」のプライベートパーティ<PM8:00〜オールナイト>は東京ディズニーランドの近くにある近代的なホテルで行われた。最近では天之蘭女王の様にクラブから離れて、一人で活動したりサロンを開いたりと様々な形でSMを表現している個性的な女王様が増えている。なかでも天之蘭はこれまでにビデオにも多数出演し、縄師とも親交があり精力的に活動をしている女王様である。個性的な女王様が増えているということはそれぞれのプライドやプレイのレベルが上がっている証拠だろう。世に言うM男達にM性があるのは間違いないが“誰に何をされても感じる”とか“誰に責められてもいい”というのは非常に稀だ。やはり自分の愛する女王様が自分に対してしてくれる事だから嬉しいというのが本音だろう。SMクラブで客としてくる奴隷と、そこで働いている女王様という関係では奴隷もM男になりきれず、女王様も同じであり、志の高い女王様達は満足いくプレイをする為、奴隷とのいい関係を築く為にクラブから離れて行くのが現状であろう。クラブを離れた天之蘭はどんなプレイによってSMを表現しているのか、期待で胸が膨らんだ・・・ |
| その劇場にはアンディ・ウオーホールプロデュースのアルバム「ベルベットアンダーグラウンド&ニコ」が流れていた。舞台上には髪が肩まで伸びている若い女が立っている。白いワンピースにやけに赤い唇が対照的に浮かび上がって見える。女の前には天井の梁にくくりつけられたロープが垂れ下がっていた。縄をたずさえた小柄な男が舞台に現れる。彼は女を組み伏せると女の手を背中にねじり馬乗りになった。女はもがき、逃れようと必死に体をくねらせている。男は縄尻を持ったまま女のワンピースを引きちぎるように脱がす。背中で両手首を縛り女の両頬を右手でつかみ上体を起こし、胸の膨らみを際だたせるようにブラジャーの上から乳房を上下に縄で縛り上げた。間髪を入れずに縄を女の口にくわえさせ馬の轡のように縛る。女は縄を吐き出そうと懸命に頬を動かした。女の顔がゆがんで動物的にさえ見える。男がくわえさせた縄を引くとそれにつられて女の体が弓なりにしなった。破れたワンピースから白い太ももが無防備にさらけだされている。男は傍らに置いてある鞭をとると力任せに女の太ももを打った。女はその瞬間胸をのけぞらせ体を硬直させる。また鞭が太ももに飛ぶ。くぐもった悲鳴ともつかない声が縄で自由にならない口から漏れる。さらにワンピースをめくり上げ薄いパンティ越しに尻を平手で打つ。そして男は満足そうに観客席を見回した。そこには舞台に引き込まれ固唾をのんで見入る百人近いマニアの熱い視線があった。現在まで続く緊縛SMショーの第一人者長田英吉の初ライブはこうして始まった。 |
| 『乳房吊りの極悪非道の縄師』。今年、千葉曳三にはこの名称がつきまとった。「S&Mスナイパー」に今年始めより連載された「真性M女キリ子の青春」でレポートされたM女へのプレイは、マニアの度肝を抜くに十分な代物だった。 両乳房を綿ロープで多重に巻かれ、その他一切体にロープはかかっていない状態で吊られるM女。吊られると同時に赤く充血する乳房が、高さが増すにつれ紫色に鬱血していく。現場のスタッフも血色をなくしたというこのレポートは、どす黒く鬱血してパンパンにはっている乳房の衝撃的な写真とともに、千葉曳三の名を熱烈なマニア以外にも喧伝することとなった。 暮れも押し詰まり、世間一般では気ぜわしい会話が交わされる時期、千葉曳三のライブは行われた。ライブ開始時間よりかなり余裕を持って会場に入る。地下1階に位置するスタジオではまさに準備の真っ最中であり、じゃまにならぬよう関係者に取材の旨を話したのち会場の隅に機材をおいてライブ開始を待った。 打ちっ放しのスタジオの観客席は優に50名は入りそうな広さがあった。畳がひかれた舞台の上の梁には格子状の櫓が組まれており、そこのほぼ中央と思われる部分にM女を固定するための麻縄が2本しっかりと結ばれていた。 千葉は忙しく現場を仕切りながらも、本番を待つ出演者達にまめに声をかけリラックスさせようという心配りを示していた。そんな際、彼の物腰は柔和であり、言葉遣いは恐縮するぐらい丁寧であった。 準備がほとんど整った段階で一般客を入場させる。瞬く間に会場は埋まりひといきれでむんむんするようになった。取材位置を確保しライブ開始をしばし待つ。すると突然照明が暗転し、ライブ開始がアナウンスされた。舞台照明がふたたび灯り、見上げると、千葉曳三とM女が舞台に立っている。伊藤晴雨へのオマージュともいうべきライブの始まりだった。 |
| 日本を代表する緊縛師・明智伝鬼の「天国と地獄」と名付けられたボンデージライブは、クリスマスを1ヶ月後にひかえた底冷えのする11月末に行われた。この日の会場となった中野のスタジオ・クイーンは、4階建てのビルの最上階に位置しライブスペースはそのスタジオの一室を使用している。客席は20人も座れば満席となってしまうぐらいの広さしかなく、客席とライブスペースを隔てるものも黒い幕のみだが、人知れずとり行われるこの種のイベントに相応しいものと思われた。 日本に10数名いるだろう緊縛師の中でも、明智伝鬼は“縄師”という特別な呼称を与えられている。自分でも縄フェチだと認める彼の縛りはその独創性によって他の追随を許さない。時に縛りを追求するあまり、ライブを見ているものに縛りの対象であるM女があたかもオブジェと化したかのような錯覚を起こさせることもある。 黒幕の前にどっしりとした木の椅子がひとつこちら向きに置かれている。椅子の背もたれの上には青白く光る蛍光ランプがくくりつけられている。午後3時を過ぎ会場の照明が落とされライブ開始がアナウンスされる。30分前には閑散としていた客席はいつのまにか満席となっている。蛍光ランプが怪しく椅子を浮かび上がらせていた。 スタッフが前列の客達に長さ50cmぐらいの細い竹の棒を渡す。そして、黒幕の中から、目隠しされすでに両手を縛られたM女がスタッフに手を引かれ登場した。黒いストッキングの上に赤い下着をつけたM女は赤い麻縄で椅子に大股開きの状態で縛り上げられる。スタッフは観客にさっき渡した竹の棒でM女をいたぶるよう指示する。竹の棒で身動きのできないM女の乳首やカントを刺せというのだ。 客達はその指示のまま、嬉々としてM女の要所を責め始める。八方からの責めに堪えきれなくなったのかM女の口元から嗚咽が漏れ始めた。その声に刺激され竹の棒による責めは積極性を増してくる。それが徐々に白熱化してきた時突然黒幕が開いた。M女の背後に明智伝鬼が仁王のように立っていた。 |
| 乱田舞のライブボンデッジショウは9月の半ば都内のイベントスペースにて行われた。 当日は強い風に時折雨も混ざる悪天候の中、マスメディア関係者を含む多数の人々で会場は溢れた。 ここ数年、彼を現す形容詞には絶えず若手の二文字が付いてきた。実際、彼の登場以降現在に至るまで彼を越える新人の姿はボンデッジ界には存在しない。そう、彼は文字どおり自他ともに認める「ボンデッジ界の若手No1」なのだ。そんな乱田舞もすでに年齢は30代半ばに達している。彼がボンデッジの世界に足を踏み入れたのは彼が高校生であった頃に遡る。「始めてのプレイパートナーは同級生のクラスメートだった」と語る彼のボンデッジ歴は20年にも達しようとしているのだ。そんな彼の周囲は、ここに来てにわかに騒がしくなってきた。彼は伝統的縄縛りの形式美を重んじる日本のSMBD界において、また、一部のマニアの為だけに存在してきた日本のSMBD界においても、今、新しいムーブメントを起こそうとしている。 彼は言う「SMBDは一部のマニア達の為だけに存在するものではない、ましてそれは特殊な性癖でさえない。誰にでも存在する一般的かつ普遍的セクシャリティースタイルなのだ」と。彼の狙いはSMBDの一般化と普及、そして独立したセクシャルエンタテイメントとしての確立にある。 メジャーテレビネットワークへの出演、SMBD文学の第一人者"団鬼六(Oniroku Dan)"フォトグラファー"深田学(Gaku Fukada)"らとのコラボレートによるCD−ROMのリリース、インターネット上での情報発信の開始、など矢継ぎ早なメディア戦略を展開する乱田舞。そして今、彼の視線はヨーロッパ、そしてアメリカを視野に入れた。 今回のTokyo Bondage Reportはライブショウ終了後に行われた会見でのインタビュー中心に"乱田舞の現在"に迫る。 |